こんにちは、二日酔い明けの写真妻です。
おかげさまでテンション高めです。
なんでしょうねこの、二日酔いの酒が抜けてゆく時の感覚。
視界がパーっと開けて世界がキラキラ輝きはじめます。
あんなに辛かったのに、あんなに苦しくて、もう酒は飲みませんと誓ったはずなのに。
夕焼けがビール色に見えます。それはそれは美しい色。
世界は美しい!さあ飲もうじゃないか!
…とまあ、いつもの流れです。飽きもせず。
と言うわけで今日は、行くとかならず二日酔いになる場所の話。
わたしたちが月に二回、心待ちにして必ず訪れる場所があります。
川西市にあるBOOKS+コトバノイエ。
既に説明不要の「ワガママな本屋」であり、同時に店主の加藤さんご一家が住まう「イエ」です。
言わずと知れた、(わたしたちの家もお願いしている)矢部達也さんの設計。
もう何年になるかなぁ、初めて訪れた時はまだ夫も駆け出しで、わたしは花屋でした。
そのときの驚きは今でも覚えています。
こんな家があるの!?
こんなふうに暮らせるんだ!
ずらっと並ぶ本棚に目と心が吸い寄せられるとともに、その「家」として、生活の場としての自由さ、まるで野っ原で清々と歌うように伸びやかに楽しげに流れる空気にもうワクワクしたものです。
何を隠そう、わたしたちが家を建てたい、と思ったきっかけは、この「イエ」なのでした。
「家」という概念をごそっと変えてくれた「イエ」。
玄関を入っていくとあっさりとオープンな間取りで店主の部屋、リビング、続いてぐるりと息子くんの部屋、主寝室、水周り、そして台所、と続き、それぞれの壁面に、それはそれは蠱惑的な本たちがぎゅうっと並んでいます。
わが家の両親も無類の本好きで、小さな頃から本に囲まれる生活を送ってきたので、わたしにとって本と本棚は、世界や誰かと繋がる上で無くてはならない大事な存在なのですが、コトバノイエの本棚は実に、なんというか、エエ顔をしているのです。
おっとこ前で、別嬪で、気障で、懐かしく、新しい驚きに満ちていて、とっつきにくくてヤキモキさせられたり、何か恥ずかしくてもじもじしちゃって直視できなかったり。
それはもう加藤さんという人そのもので、加藤さんのことがとても好きなわたしにとって、コトバノイエの本棚はもう恋ですと言ってもいい。
でもね、今回は本棚の話ではないのです。
台所。
そもそもわたしは台所が好きです。
仕事柄いろんな家を見てきましたが、それぞれの家でいちばん好きな場所は、台所なのです。
料理を作る、というだけでなく、思考し、想像し、企み、手を動かす。集中する。緩む。
会話する、笑う、飲む、食べる。
できればオープン過ぎず、適度に篭れて、アトリエのような、秘密基地のような。
何でも生みだせる。どんな「場」にもなりうる。
人生にとって必要なものはみな、台所から生まれる気さえします。
コトバノイエの台所。
「ただいま!」と玄関をくぐるとわたしはまず台所に直行します。いい匂いのする何かを作っている加藤家の綾子さん、もしくは先に来ていた誰かが「おかえりー」と迎えてくれる。「おなか減った!」と言いながらビールをカシュっと開ける。
そして料理をしながら、美味しいものが出来上がってゆくのを見ながら、お酒をたくさん飲み、つまみ食いをし、いろいろな人と話し、おおいに笑い、ときに泣いたり怒ったりし、よく歌います。
台所で。
冷蔵庫の上には猫のハルのベッドがあって、ときどきニャーッと降りてきてはご飯をねだる。新入りのブルーがそれをみつけて悪戯をする。
いろんな人たちのサテライトオフィスになることも。何故か打ち合わせが捗るのです。
あ、撮影に使わせてもらったこともありました。
台所のすぐ外には気持ちのいいデッキがあって、そこで飲むビールはもう格別で、ついつい飲み過ぎてしまう。
ほろ酔いで、いいきもちで料理を作ったり。
大人数でわあわあ美味しいものを囲んだり、少人数で深酒したり。
美味しいものが生まれる、集まる台所。
だからこそ生まれる、集まってくる楽しいこと。
なんて愛おしい場所なのだろう。
わたしは間違いなく、加藤さんの本棚と同じく、綾子さんの台所に恋しています。
そしてコトバノイエの本棚と台所、その両方を設計した矢部さん。
矢部さんの家の台所も最高なのです。
矢部さんも奥さんの仁見さんも非常に料理が上手で、毎度ツボをついた食べ物やお酒を出していただけるので、打ち合わせが楽しみで仕方がありません。
美味しい食べものやお酒が好きで、それらを楽しむ方法を知っているし探求することに余念がない。
酒を飲みながら模型や図面を眺め、あーだこーだと打ち合わせるわけですが、当然、途中から何も覚えていません。
毎回べろんべろんです。そりゃあもう。
ハッ、これはそういう手か?!
とも思ったりしないでもないですが、もうどうでも良いんです、楽しいし、美味しいし。
実は昨夜も、矢部さんの家で、打ち合わせという名の飲みでした。
いまもめくるめく余韻(二日酔い含む)に浸っております。
なによりもこんな台所で、美味しいものや楽しい家、なにか「もの」が生まれる瞬間に立ち会えて、お酒が飲めちゃうことがもう、嬉しくて仕方がない。
10年暮らした今のわが家の台所も好きです。
大家のおじいさんが昔ご自分で造作した台所。
寒いし暑いし、少し使いにくいけれどそれも今では愛着に。
あと少しの間だけど、よろしくね。
わたしたちはこの先、どんな台所を作れるのだろう。そこでなにが生まれるんだろう。
ワクワクを通り越して、もう武者ぶるい。
緊張してきた。
さ、酒をください。